- とき
- I
とき【土岐】姓氏の一。 美濃国守護。 清和源氏頼光流。 美濃国土岐郡土岐郷より起こる。 戦国末, 頼芸は斎藤道三に逐われ没落。IIとき【土岐】岐阜県南部の市。 東濃地方にある美濃焼の中心地の一。 食器を多く生産。IIIとき【斎】〔仏〕〔仏弟子の戒律として正午を過ぎての食事を禁ずる規定があり, 時間内の食事を斎食(サイジキ)・斎, 時間外のそれを非時食(ヒジジキ)・非時といい, これが時刻にかかわるものである所から, 食事を「とき」と呼ぶ〕(1)僧侶や修行者が戒に従って, 正午前にとる食事。 時食。 おとき。⇔ 非時(2)肉・魚などを用いない料理。 精進料理。(3)法会の際に出される食事。 施食(セジキ)。(4)法会, 仏事の俗な呼び方。IVとき【時】(1)過去から未来へと限りなく流れ過ぎて, 空間とともに, 一切の出来事がそこで生起する枠のように考えられているもの。 時間。
「~の流れ」「遊びに興じて~の経つのも忘れる」
(2)昔の時間区分。 一昼夜を一二等分する定時法では一時(イツトキ)が今の二時間に当たるが, 昼夜を分けてそれぞれを六等分する不定時法では季節・場所によって異なり, たとえば江戸(東京)の夏至ごろの昼の一時(イツトキ)は約二時間四〇分, 夜のそれは約一時間二〇分で, 一時間以上もの差があった。 十二区分に十二支を配し, 「子(ネ)の時」「丑(ウシ)の時」などということが多い。(3)ある幅をもって考えられた時間。 (ア)年代。 時代。「将軍綱吉の~」(イ)話題にしている時代。 その時世。 「~の首相」「~の権力」(ウ)季節。 時候。 時節。 「~は春」(エ)時勢。 世の成り行き。 「~に従う」(オ)誰かにとって都合のよい時勢。 「~に遇(ア)う」
(4)一点として, またそれに近いものとしてとらえられた時間。 (ア)時刻。「~を告げる鐘」(イ)漠然ととらえられたある時点, または時期。 「~には酒を飲む」「~として不調になることもある」(ウ)何かをするのに都合のよい時機。 好機。 「~を待つ」「~を見て実行する」「~にかなう」(エ)(「秋」とも書く)大事な時期。 「危急存亡の~」
(5)ある特定の動作や状態が起こる時間。 おり。「この前彼に会った~は元気だった」「子供の~の思い出を話してくれた」
(6)(ア)ある状況を伴った時間を抽象的にいう。 場合。「どんな服装がよいかは~と場所による」「~に応じた判断が必要だ」(イ)(連体修飾句を受けて)仮定的・一般的にある状況を表す。 (…する)場合。 「もし彼が不在の~には, どうするか」「頭が痛い~は, この薬を飲むとよい」
(7)「時制(ジセイ)」に同じ。(8)(「どき」の形で)名詞や動詞の連用形の下に付いて, それにふさわしい, それの盛んな, あるいはそういう状態の時間であることを表す。 (ア)時刻。 時間帯。「昼飯~」「会社の引け~」「たそがれ~」(イ)時節。 季節。 「花見~」「木(コ)の芽~」「梅雨(ツユ)~」(ウ)時機。 機会。 「書き入れ~」「売り~」「引き上げ~」
→ 刻→ 時しも→ 時として→ 時に~有・り(1)時節が到来する。「~・りて花も紅葉もひと盛り/風雅(雑中)」
(2)好機に合う。 栄える。 時にあう。「~・るも時なきも, 御心ざしの程こよなけれど/栄花(月の宴)」
~移り事(コト)去・る〔陳鴻「長恨歌伝」〕歳月が経過すれば, すべての物事が変化する。「たとひ~・り, たのしびかなしびゆきかふとも/古今(仮名序)」
~が解決するつらい思いや困難な問題も, 時がたつにつれて自然とおさまってしまうものだ。~知らぬ山〔いつも雪をいただいていて, 季節の移り変わりを知らない山の意〕富士山のこと。「~は富士の嶺いつとてか鹿の子まだらに雪のふるらむ/伊勢 9」
~知・る時節をわきまえる。「~・らば花もときはの色に咲け/増鏡(むら時雨)」
→ 時知り顔~知る雨〔秋が終わり冬の訪れる時を知っている雨の意〕時雨(シグレ)の異名。「~のいかでふるらん/秋風抄」
~とすると場合によっては。 ひょっとすると。 時として。~と場合(1)時期と場所柄。「~を選ぶ」
(2)その時その時の場合・機会。「~による」
~無(ナ)・し(1)定まった時がない。 いつものことである。「み吉野の耳我の嶺に~・くそ雪は降りける/万葉26」
(2)不遇である。 世に用いられず失意の状態にある。「身の~・かりしをのみ見え奉りて/今鏡(藤波下)」
~に遇(ア)・う好機にめぐりあう。 栄える。「み世のみかどにつかうまつりて~・ひけれど/伊勢 16」
~に遇(ア)えば鼠(ネズミ)も虎(トラ)となる時流にあうと, 取るに足りない者も勢い盛んになる。~に当た・る(1)その時に臨む。「人の心の~・りて気色ばめらむ/源氏(帚木)」
(2)ふさわしい時になる。 時にあう。「其上今の相国は, ~・る職に達し/太平記27」
~に従・う時の流れに従う。 時勢に順応する。~に取りて(1)場合によって。「人, 木石にあらねば, ~, 物に感ずる事なきにあらず/徒然 41」
(2)その時に当たって。 当時にあって。「信西は~さうなき者なれば/愚管 5」
~に因(ヨ)・るその場合・状況に応じる。 場合による。「親切も~・っては仇(アダ)になる」「冗談も~・りけりだ」
~の=代官(=大将)日の奉行世の中をうまく渡っていくには, その時々の権力者に従っているのがよいということのたとえ。~の用には鼻をも削(ソ)ぐ緊急を要する場合には手段を選ばないことのたとえ。 時の用には鼻を欠く。~は得難くして失い易し(1)〔史記(淮陰侯伝)〕好機にめぐりあうことはなかなかできず, たとえ好機に恵まれてもそれはとりにがしやすい。(2)〔淮南子(原道訓)〕わずかな時間でも大切にしなければならない。~は金なり〔Time is money.〕時間は貴重で有効なものであるから, 浪費してはならない。~は人を待たず時間は人の都合などにかまわず刻々に過ぎてゆく。 歳月人を待たず。~を争・う一刻を争う。~を失・う(1)好機をにがす。 チャンスをにがす。(2)時勢に合わずに衰える。「~・ひ世に余されて/方丈記」
~を移さず実行の時を延ばさずに。 すぐさま。 即座に。~を得(エ)顔時流に乗って得意顔なさま。「保守的思想が~に跋扈するのであるから/一隅より(晶子)」
~を得る好機にめぐりあって栄える。 時流に乗る。「~得た新製品」
~を稼・ぐ時間をひきのばす。 時間をかせぐ。~を奏・す宮中で宿直の官人が時刻を告げ知らせる。「時奏する, いみじうをかし/枕草子290」
→ 時の奏~を撞(ツ)・く時刻を知らせる鐘を鳴らす。~をつく・る鶏が鳴いて夜明けの時を知らせる。~を待・つ時機を待つ。 好機の来るのを待つ。Vとき【鬨・鯨波】合戦で, 士気を鼓舞するために多人数の者が同時に発する叫び声。 戦闘のはじめ, 大将が「えいえい」と叫ぶと部下一同が「おう」と答えた。 ときの声。~をあわ・せる敵の鬨の声に応じて, 味方が鬨の声をあげる。「三百余騎にて, 鬨をぞ合はせける/平家(八・長門本)」
~をつく・る鬨の声をあげる。VI「敵(カタキ)平等院にと見てんげれば, ~・ること三箇度/平家 4」
とき【鴇・朱鷺・桃花鳥】コウノトリ目トキ科の鳥。 学名ニッポニア-ニッポン。 全長約75センチメートル。 全身が白色の羽毛に覆われ, 後頭部に長い冠羽がある。 翼や尾羽は淡紅色(鴇色)を呈し, 顔の裸出部と脚は赤色。 繁殖期には羽色が灰色となる。 黒く長いくちばしは下方に湾曲する。 日本では1981年(昭和56)に野生種は絶滅し, 現在, 中国陝西(センセイ)省で繁殖が確認されているのみ。 特別天然記念物および国際保護鳥。 朱鷺(シユロ)。
Japanese explanatory dictionaries. 2013.